判  例   集

海事判例(全文)集作成の決意 (2000年2月3日)

 私の恩師忽那隆治弁護士は1989年12月に後輩海事弁護士有志から海法について定期的な指導を受けたいと要請されるや、欣然これを受諾、爾来毎月1回主宰される海事法研究会は10年間に延べ120回を数え連綿として続いている。その成果は目にこそ見えね、わが国の海事弁護士並びに海事法に携わる実務者の質的向上に資してきたことに疑いはない。
 顧みると私も海事弁護士として間もなく26年になる。その間依頼者へ齎した若干の経済的利益を除けば残すものなきことに暗然たらざるを得ない。
しかし58才の誕生日を明日に控えた今日、私にできることも少しはあるであろうと思いつくに至った。それは海事に関する判例の原本を集め、これの全文を忠実にパソコンに入力し、研究者から求めがあればそれに応じて提供することである。傍者は言うであろう。判例集があるではないか、CD-ROMが出ているではないかと。
 否、私が求めるのは当事者も代理人弁護士も、船名も商社もそのすべてを判決原本のままフルネームで再現することである。
 わが国では判例集に於いてすら証拠に関する文章が《証拠略》などの記述で省略されたりして全文の紹介がなされることが少ないうえ、判例評釈に至っては原告X1、X2、被告Y1、Y2とか、訴外Z1、Z2とか、船名A丸、B丸とか略されていることが多く、このことが我々研究者が判例を記憶する上でのひとつの消極的障碍になっていることは否めない。そこで私は必ず判決・決定の原文を入手したうえでその全文を記録しておくことにはそれなりの意義があると考え、また、これであれば私でも時間さえかければ些かなりとも貢献できると考え、ここにその一歩を踏み出すことにした。

海事判例(全文)集作成の決意(2001年10月1日変更)

  私は先に2000年2月3日付で『海事判例(全文)集作成の決意』を表明した。その決意に基づき作業に取り掛かったところ、大きな困難に遭遇した。それは、
@判決原文と一字一句ミスタイプなしに入力することが予想以上に困難であること
Aこの困難は判決原文の1頁内の文字の行数・配列をそのまま復元しようと試みるとき更に大きくなる
B原判決そのものに明らかなミスタイプがあったときそれをそのまま入力すると検索者が戸惑う
C入力に膨大な時間を要する
よって再考し、判決原文(ないし良好なコピー)をそのままスキャナーで読み取り、映像で入力することに方針を変更した。こうすることにより、上記@〜Cの困難は解決される。
 判決原文(または良好なコピー)をそのまま視覚で把えることができるという利点は、判決文中の検索ができないことの不足を補ってくれるのではあるまいか。御了承を乞う。

保険法に関する判例を加える(2002年1月9日) 
 保険法に関する判例も加えることとした。

ANTENOR 号事件判決を加える(2006年5月)

Asahi Metal 事件に関するPetition for certiorari、合衆国最高裁判決(1987)、神戸地裁尼崎支部昭和63(1988)年判決を加える。(2006年7月)
2006年7月14日(金)の夕刻、第172回忽那海事法研究会が Fortis Corporate Insurance v. Viken Ship Management, et al. (U.S. 6th Circuit Court of Appeals), 450 F.3d 214 を主題として都内キャピトル東急ホテル内中国料理「星ヶ岡」で開催された。この日集ったのは主宰者忽那隆治弁護士をはじめ赤木文生(ゲスト)、石黒一憲教授、安藤誠二(発表者)、池山明義、石井優、小路丸正夫、坂本紀子、佐鳥和郎、津留崎裕、藤井郁也、宮脇亮次、森明、山下真一郎であり、このうちゲストの赤木弁護士は遠路神戸からこの集まりだけのためにお越し下さった。それは今回の主題判決がアメリカの管轄法発展の上の著名な判決である Asahi Metal 事件判決の延長線上にあり、赤木弁護士はその Asahi Metal 事件を担当された御当人だからである。発表と討論の後、赤木弁護士からなされた Asahi Metal 事件についての回顧的報告は、判決文には表われない諸事情(送達を受け、今は亡き石井萬里弁護士の紹介を受けサンフランシスコに代理人を選任し、カリフォルニアの裁判所へ出頭してみたら既に審理開始から4年が経過した後だった) 、担当弁護士の苦労(依頼者の経済状態を慮り、3度の渡米のうち1度は自費で賄った)及び Washington D.C. 所在の合衆国最高裁の法廷で目撃された生々しい状況(緩やかに弧を描いて着座する9人の判事に向かって代理人が立って主張を述べ終えるや否や、それら判事から代理人に対して矢継ぎ早に、十字砲火の如くに様々な質問が浴びせられ、代理人もその場でたちどころに応答した)を伝え、当夜の参加者に深い感銘を与えた。赤木弁護士と司法研修所同期・同クラスで、且つ神戸の吉田精三法律事務所時代の同僚でもあった忽那弁護士は研究会終了後、赤木弁護士を美酒で慰労され、私もその御相伴に与った。その席で私は赤木弁護士にお願いし、神戸から持参された資料一式をお預かりし深夜の小田急線で持ち帰った。連休明けの7月18日、このホームページへの掲載をお願いした結果、快 い御承諾を戴くことができ、かくしてこの貴重な資料をここに掲載できることとなった次第である。

藤井郁也

収録判例集

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1 “ANTENOR” 号積来り救命艇損傷事件 神戸地裁判決昭和45年4月14日
日本の損害保険会社が発行した英文貨物海上保険証券[Marine Insurance Act, 1906 の末尾に First Schedule として示された Lloyd’s S.G. Policy に倣って1939年に Institute of London Underwriters が制定した The Companies Combined Policy (cargo) に倣って1949年に日本損害保険協会が定めた標準書式に則った証券]の下における保険代位の準拠法につき、日本法の適用があると判示された事例
―我が国の損保が発行する英文貨物海上保険証券の下における保険代位の準拠法に関するリーディング・ケース―
 判例タイムズ288号283頁、ジュリスト No.580、渉外判例研究、石黒一憲、別冊ジュリスト208頁、石黒一憲『保険代位による債権の準拠法』、別冊ジュリスト236頁、櫻田嘉章『保険代位』
3,145KB
“IMIAS”号積来りキューバ産砂糖海上輸送中汐濡事件 東京地裁判決(昭和57年2月10日) 5,648KB
ASAHI METAL INDUSTRY CO., LTD. - PETITION FOR A WRIT OF CERTIORARI TO THE SUPREME COURT OF THE STATE OF CALIFORNIA - October Term, 1985 8,891KB
ASAHI METAL INDUSTRY CO., LTD. v SUPERIOR COURT OF CALIFORNIA, SOLANO COUNTY (CHENG SHIN RUBBER INDUSTRIAL CO., LTD., REAL PARTY IN INTEREST) - CERTIORARI TO THE SUPREME COURT OF THE STATE OF CALIFORNIA -No. 85-693-  Decided, February 24, 1985 (480 U.S. 102)
藤田泰弘『日/米国際訴訟の実務と論点』Transnational Litigation: U.S./Japan −Points and Authorities−
日本評論社 1998年 50〜52頁、127〜136頁
1,003KB
石炭・鉄鉱石撒積輸送船"STOIC"1979年8月19日於赤尾嶼座礁沈没事件に関する1986年11月24日ニューヨーク仲裁判断
日本海損精算人協会 会報第47号26〜36頁
12,402KB
神戸地裁尼崎支部 昭和58年(ワ)第486号債務不存在確認請求事件; 昭和59年(ワ)第210号損害賠償反訴請求事件; 原告・反訴被告株式会社旭金属工業所(原告・反訴被告代理人弁護士赤木文生)/被告・反訴原告正新橡膠工業股份有限公司; 昭和63年5月17日判決言渡(確定) 614KB
添付 同事件に証拠として提出された検甲第1号証 (昭和58年(ワ)第486号)  
添付 同事件に証拠として提出された検甲第2号証 (昭和58年(ワ)第486号)  
漁船第一韓寶号/漁船第七十五千鳥丸衝突損害賠償請求事件 第一審仙台地裁判決(平成1年9月27日) 1,399KB
漁船金毘羅丸船主・船長搭載作業船兼交通船第十八勝丸との家島港沖衝突に伴う業務上過失傷害被告控訴事件 大阪高裁無罪判決(平成4年7月21日) 2,075KB
汽船栄久丸冷凍装置整備中アンモニアガス噴出整備員4名死亡事件 最高裁判決(平成5年1月21日) 1,901KB
10 汽船第一韓宝号/汽船第七十五千鳥丸衝突事件 仙台高裁判決(平成6年9月19日) 851KB
マグロ漁船第一八克丸大隈半島ヒラメ稚魚飼養池沖座礁重油流出損害賠償請求控訴事件 福岡高裁宮崎支部判決(平成8年3月27日) 284KB
12 第七十五千鳥丸責任制限申立事件 仙台地裁気仙沼支部決定(平成8年12月2日) 749Kb
漁船第一韓寶号/漁船第七十二千鳥丸衝突責任制限申立事件 第二審仙台高裁決定(抗告状を含む)(平成9年2月5日) 3,365KB
14 機船“BREMEN SENATOR”号六連島油槽所桟橋衝突・座礁船主責任制限申立事件関連、第22号査定の裁判に対する異議事件 山口地裁下関支部判決(平成9年3月26日) 991KB
機船CAMFAIR号積丸太船体放棄坐礁全損損害賠償請求事件 第一審 東京地裁判決(平成9年9月30日)
「ジュリスト」(No.1156)1999.6.1 153頁
1,942KB
添付 同事件に証拠として提出された関連する船荷証券 B/L No.TGT/K-1 16,713KB
添付 同事件に証拠として提出された関連する船荷証券 B/L No.ULK-1 17,181KB
マグロ漁船第一八克丸大隈半島ヒラメ稚魚飼養池沖座礁重油流出損害賠償請求上告事件 最高裁判決(平成10年2月12日) 1,462KB
機船CAPE WIND号向け舶用塗料代不払による船舶競売申立前国籍証書引渡命令執行・仮差押が法人格否認法理に基づくことが損害賠償の理由になるとして請求した事件 東京地裁判決(平成10年4月30日) 3,338KB
漁船第一韓寶号/漁船第七十五千鳥丸衝突損害賠償請求上告事件 最高裁判決(平成10年6月25日) 3,659KB
巻き網漁船「第一大吉丸」燻蒸消毒青酸ガス吸引死亡損害賠償保険代位請求事件 長崎地裁判決(平成11年2月19日) 1,231KB
20 ROKKO号積サバ産丸太船荷証券所持人外引渡損害賠償請求事件 東京地裁中間判決(平成11年9月13日) 1,064KB
ノースウエスト航空託送コンピュータ於成田空港紛失損害賠償請求事件第一審 東京地裁判決(平成11年10月13日) 2,003KB
Bulk Carrier “FRONTIER MARU”売買契約紛議仲裁事件判断書(平成12年2月10日) 1,865KB
23 汽船ROKKO号船舶競売開始決定取消及び申立却下決定に対する執行抗告事件 (原審水戸地裁麻生支部)東京高裁決定(平成12年2月25日) 1,674KB
24 女性用ブランド衣類於ミラノ マルペンサ空港付近保税上屋盗難対日本貨物航空(株)興亜火災海上保険(株)保険代位求償事件 東京地裁判決(平成12年3月3日) 1,518KB
25

26

UNISON SPLENDOR号積サラワク丸太沈没油汚染損害賠償請求控訴事件判決 東京高裁判決( 平成12年9月14日)
高裁民集53巻2号 124頁〜169頁 「判例時報」(1737号)133頁 金融商事1116号46頁
上記25事件の更正決定 東京高裁(平成12年11月9日)
2,331KB

192KB

“MANOLIS”積来りエクアドル産魚粉発熱・発煙事件 東京地裁判決(平成12年9月22日)
「判例時報」(1771号)平成14年3月11日号135頁〜147頁
4,686KB
添付 同事件に証拠として提出された関連する船荷証券 B/L No.1 2,688KB
添付 同事件に証拠として提出された関連する船荷証券 B/L No.2 2,753KB
添付 同事件に証拠として提出された関連する船荷証券 B/L No.3 2,733KB
添付 同事件に証拠として提出された関連する船荷証券 B/L No.1 2,826KB
添付 同事件に証拠として提出された関連する船荷証券 B/L No.7 2,606KB
添付 同事件に証拠として提出された関連する航海傭船契約書 26,474KB
“MANOLIS”積来りエクアドル産魚粉発熱・発煙事件 東京高裁判決(平成13年10月1日)
「判例時報」(1771号)平成14年3月11日号118頁〜135頁
「金融・商事判例」(No.1132) 平成14年1月15日号16頁〜38頁
5,174KB
29 火災保険金請求事件で保険契約者・被保険者の故意・重過失が認定された事例 東京地裁判決(平成13年12月28日)
「保険毎日新聞」損保版 平成14年3月20日 及び同22日判例紹介
8,053KB
30 “MANOLIS”積来りエクアドル産魚粉発熱・発煙事件
上告棄却 上告不受理決定 最高裁決定(平成14年2月22日)
1,668KB
31 In the Matter of the Complaint of: RATIONIS ENTERPRISES, INC. OF PANAMA, as Owner, and MEDITERRANEAN SHIPPING CO. S.A. OF GENEVA, as Bareboat Charterer of the MSC CARLA for Exoneration from or Limitation of Liability.
UNITED STATES DISTRICT COURT SOUTHERN DISTRICT OF NEW YORK  July 9, 2004
1,898KB
32 同上の訳文 329KB
33 東京地裁平成14年(ワ)第4953号損害賠償請求事件、平成16年4月26日民事第33部“JOANA BONITA”号一審判決。 3,024KB
34 東京高裁平成16年(ネ)第3048号損害賠償請求控訴事件、平成16年12月15日第12民事部“JOANA BONITA”号二審判決〔確定〕 1,349KB